タヨマ商店

立山からの帰り道、石川県の橋立漁港の魚屋さんに併設されているセルフスタイルの食堂で、お昼ご飯を食べることにした。ご飯セット(ご飯と味噌汁と漬物)に、アジの塩焼き、カレイの塩焼き、ホタテフライ、アジフライ、岩モズク、ポテトサラダをおかずに。
お腹がくちくなったところで、「日本元気村」(「日本元気劇場」に訂正)に立ち寄ることに。入園料は大人一人500円となかなかに気軽だ。ここは昔は、たしか、「加賀時代村」という名前の施設として営業していた。当時は忍者屋敷や忍者資料に武家社会をモデルにしたお芝居などが見世物だったように記憶している。今回行ってみると、忍者資料はそのままだが、見世物は幕末の新撰組を中心とした内容になっていた。
新規リニューアルオープン直後ということもあり、スタッフの皆さんは、とても元気よく丁寧に働いていて好感が持てる。が、ひとつひとつの見世物の入館料がやや高額に感じて素通りしてしまう。一日フリーパスも大人一人3000円で売られているのだが、園内の情報が十分ないままに買うにはちょっと高く感じるし、園内を一通りぐるりと見て、どこで何が催されているか把握した頃には、気分的にお腹一杯になってしまい、あらためてフリーパスを買って、どこかで何かを見よう、という気分にならない。
いや、一日まるまる、ここだけを目指してやってきたのであれば、「今日は一日、元気村で遊ぶぞー!」という気合のもと、フリーパスを使い倒すのかもしれない。しかし、山の緑と滝のしぶきと魚のお昼ご飯でお腹一杯の体は、なんか、もういいやあ、という気になってしまった。従業員さんたちの頑張りが伺えるだけに、今日の私たちのような、ついでに立ち寄ったお客の心もつかむようなプロデュースを期待したいところだ。
ところで、ここの園内の案内板は、日本語と韓国語と英語とで表記されている。韓国からのお客さんの来園も見込んでいるということだろうか。園内には、ゲゲゲの鬼太郎(きたろう)のグッズを扱う「鬼太郎商店」なるものがあるのだが、この商店へと誘う案内標識のハングルに、おや、と思う。「鬼太郎商店」の漢字をそのままハングル読みしたとしたら、人名の「きたろう」はそのままの音を使うので、「キタロサンジョム」という(あえてカタカナで書けば)音になるはずなのだけれども、ここのハングル表記板を音読すると「タヨマサンジョム」なのだ。「サンジョム」は「商店」の韓国語読みなので、別段不思議ではないのだが、「キタロ」が「タヨマ」なのが不思議だ。私が、表示板のハングルを指差しながら、夫に、「ほら、見て。なんで、タヨマ、なんだろう?」と言うと、夫は「タヨマっていう韓国語は、妖怪とか、そういう意味じゃないの?」と言うが、それはたぶん違う。「なんとなく、私の予想でだけど、韓国で、日本のアニメの鬼太郎を放映してるけど、その名前が、なぜか、勝手に、タヨマ、なんじゃないかな。韓国の人たちにとっては、タヨマのお店だよ、って書いたほうが、すぐにイメージしてもらえるから、タヨマがもともと日本では鬼太郎なんですよ、とか、そういう解説はすっとばして、もう、タヨマ商店でいいじゃん、ってことにしたんじゃないかな。」と話しながら帰宅して、調べてみたところ、やはり韓国では、「ゲゲゲの鬼太郎」は「妖怪人間タヨマ」という名前で放映されていることがわかった。
ちなみに、私が持っている韓日辞典には、「タヨマ」という単語は載っていない。「タヨマ」という音が、どんなイメージやニュアンスを持つのかもわからない。なぜ鬼太郎が「タヨマ」になったのかもわからない。今後も彼「鬼太郎」が私の中で「タヨマ」になることはないと思う。

追記。上記の施設名は、「日本元気村」ではなく、「日本元気劇場」が正しいようである。園内では延々と「元気でSHOW!」の歌が流れている。