バジル苗ようこそ

バジルの種か苗と出会いたいと願いつつ、なかなか出会えずにいたけれど、今日、いつも日曜の午後に食料の買出しに行くスーパーに隣接している園芸店に立ち寄ってみたら、そこであっけなく、バジルの苗に遭遇した。これまでも何度か立ち寄ってはいたのに、これまでは出会いがなくて(ただ単に気づかなかっただけかも)、今日になって出会うということは、今日がその日、ご縁の日、だったということであろう。
店内に入って、お店の人に、「バジルの苗、外にあるの、いただけますか」とたずねる。お店の人は、「どちらのバジルになさいますか」と私に聞き返す。お店の人と一緒に外に出て、実物を見ながら話す。
「何種類かあるんですか?」
「そうなんですよ。二種類あるんです。こちらのは、ひとつ百八十円なんですけど、もうひとつのこちらのだと値段が三倍くらいするんです。安いほうのも元気ないい苗なので十分いい苗なんですけど、高いほうのは、ハーブの苗を専門に栽培している農園のもので、栽培者さんも生産地もはっきりしていて、ものもしっかりはしています。バジルの種類そのものは、両方とも、同じスウィートバジルなんですけどね」
「じゃあ、安いほうと高いほうと両方一個ずつください。育て比べ、食べ比べ、してみます」
「ああ、それは、いいですね」
「うちの植木鉢の直径は、これ(両手をわっかにして見せて)(約二十七センチ)くらいなんですけど、苗はふたつとも一緒に植えてだいじょうぶでしょうか」
「それだと、ふたつ植えるのに、ちょうどいい大きさですね」
それからお店に入って、レジでお金を払いつつ、バジルの手入れの仕方を教えてもらう。大きな葉っぱから採って食べて、花が出てきたらつぼみのうちにちぎって捨てる。葉のついてない枝の先端は、分かれ目の根元のところでハサミで切る。そうすることで、小さな葉っぱが大きくなりやすくなる。水はたっぷり与える。
苗とはいっても、もうかなりしっかりたっぷりと葉っぱがたくさんついていて、すぐにでも食べられそうないいにおいがしている。両方いっしょにひとつのビニール袋に入れてもらう。食品売り場を歩いている間も、袋からいいにおいがしてくる。
帰宅したらすぐに、植木鉢に植え替える。ベランダで放置していた植木鉢の土に水を加えて耕しながら、肥料(鯉のエサみたいな大きさと形)を混ぜ込む。あとからかぶせる分の土を別のお皿にとっておいて、穴を掘った状態のところに、それぞれの苗を入れて、根の部分を土に埋める。お皿の土も戻して軽く抑え、それぞれのプレートを土に刺す。写真つきのほうが安いほう。「スウィートバジル」と文字だけが書いてあるのは高いほう。最後にたっぷりと土全体に水をかけて、植え替え完了。
小さなザルをふたつベランダまで持って来て、安いほうと高いほうと、それぞれの葉っぱをちぎって別々に入れる。葉っぱのぶりりとしっかりとした感じは、高価な葉っぱのほうが上かも。台所に持って入って、水道水で葉っぱの両面を洗う。全部洗い終えたところで、両方の葉っぱを食べ比べてみる。おお、なるほど。葉っぱそのもののにおいの差はそれほど感じないけれど、口に入れて、歯で噛んで、それから鼻に抜ける香りが、値段の高いほうがたしかに、より深く高く立ち上るかんじだ。でも、安いほうのも十分においしい。
お皿にのせたバジルの葉っぱを、夕食のサンドイッチの具のひとつとして、食卓に並べる。他には、サラダ菜、トマトスライス、薄切りにして炒めたアスパラガス、炒り卵、蒸したアスパラガス、蒸したソーセージ、生ハム、粒マスタード、オリーブオイル、粗塩、夫はこれにマヨネーズとチーズも追加。パンはフランスパン生地の食パン。満願成就のおいしさ。
安いバジルと高いバジルと両方の、我が家のベランダでの豊作豊穣祈願の舞い。