船の映画

広島帰省から戻り、車にガソリンを満タンにしてから帰りましょう、ということで、ガソリンスタンドに立ち寄る。ガソリンが給油される待ち時間の間に、ガソリンスタンドの上のほうにかかっているブリジストンタイヤの広告の旗が目にとまる。

「ねえねえ。どうやらくん。あの、ブリジストンタイヤの広告の旗のところについてる俳優さんって、レオナルド・ディカプリオさん、かな?」
「どれ? ああ、あれ。うん。レオナルド・ディカプリオ
レオナルド・ディカプリオさんは、昔、船の映画に出てた人だっけ?」
「船の映画って、なんだ? 男たちの大和、か?」
「ちがうよ。船が沈む話だよ」
「船が沈む話はいろいろあるやろうけどなあ」
「だからー。外国の昔の話で、豪華な客船が氷山にぶつかって沈むやつだってば。タイトルが思いだせないだけじゃん。ここまで言ったらなんのことかは、どうやらくんはもうわかってるんじゃろ?」
「わかるけど、がんばって思い出してみたら?」
「あああああ。くうううう。はあっ、タイタニックだあ。で、タイタニックの俳優さんで合ってるんだっけ?」
タイタニックもだけど、あとは、キャッチミーイフユーキャン、とか」
キャッチミーイフユーキャンは、私、みそ記に書いたことがある記憶があるけど、中身の記憶がない。なんだっけ。ディカプリオさんが家族を養う話だっけ?」
「うわー。ぜんぜん違う」
「あ、じゃあ、あれじゃないかな。ディカプリオさんのほうが養われる側の話の記憶がどこかに挟まってるんだよ、きっと(これはあとで調べたところ「ギルバート・グレイプ」という作品であったもよう。そして家族を養っていたのはジョニー・ディップさんであった)」
「それがなんのことかはわからんけど、ブラッドダイヤモンド、なんかも代表作なんじゃないかな」
「あ。キャッチミー、思いだした。偽造やら偽装やらで犯罪者として活動した後、犯罪捜査に協力する人になる話だよね」
「そうそう。アメリカならではのベッタベタなハッピーエンドのアメリカ映画」
「いいじゃん。ハッピーエンド。そんな無理してアンアッピーにせんでも。とにかくね。昔は若いお兄ちゃんだったディカプリオさんも、こういう(ブリジストンタイヤの広告の写真のような)いいかんじのおじちゃんになってよかったなあ、と思って」
「はあ、そうですか」

私が映画のタイトルや内容やその他いろんなことをとっさに思い出せないことがあるのは、私が年をとったからではなくて、これはずっと若いころからの私の特技なのだから、年を重ねるに従って磨きがかかる一方のはず。さあ、どんとこい。