琵琶湖と鮒ずし:弐

琵琶湖一周旅行は、湖北から、西岸沿いに、南に向かって走行。とはいっても、西岸沿いは、湖沿いぴったりに道路があるわけではなく、わりと普通の市街地を走る。お天気は、あいにくのままだけど、少し小高い道路からは、湖の景色がよく見える。なるほどー。湖の西は、こんなかんじなのねー。と話しながら、湖南部の三井寺(みいでら)へ。

三井寺は、広くて、寒い。敷地内は、空気がぴんと澄んでいて、雪が舞う。寒い。「仏様たち立派だねー。」「紅葉の季節はきれいだろうねー。」「桜の時期も気持ちいいねー。」「でも今は寒いねー。お客さん殆んどいないねー。」
あまりの寒さに、さくさくと、さらさらと、見て歩き、駐車場に戻ってゆく。寒さが北陸の寒さと違い、空気が乾燥しているせいか、寒いと言うより、痛く感じる。

今宵の宿は、大津市瀬田駅前にある、ホテルクオリティワン。ツインの部屋に入ってさっそく、窓を開ける。寒いけど換気。大きな窓で、部屋も広めで明るい。加湿器と湯沸かし器も貸し出してもらい、室内を自分仕様に整えてゆく。ああ。快適。

夕ご飯は、近くのお店で、コース料理をいただく。コースの最後は、土鍋ご飯。白魚と山椒が炊き込んである。山椒の丸い実をご飯とともにぷちぷち噛むと、口いっぱいに、清涼感が拡がる。ご飯なのに、口の中が、ひやひや、すーはーすーはー、する。山椒は、好きなので、おいしいけど、あまりのひりひりに、山椒最後の数粒は、口に入れずに、茶碗に残す。

ああ。お腹いっぱい。町には雪が舞い、乾燥した空気が、寒さをいっそうひきたてる。

ホテルの部屋に戻り、湯船にお湯をはってから、体をお湯にゆっくりつける。あたたまる。お風呂から上がって、まだ9時半くらいだけど、体がどんどん眠くなる。ベッドに入るとすぐ眠る。

ところが。眠っていたけど、何かひどく息苦しくて目が覚める。部屋はまだ明るい。夫は、部屋の外へ、タバコを吸いに出てるようだ。何時だ?11時過ぎだ。息苦しい。なぜだ。ちゃんと窓を開けてるはずなのに。寝ぼけ眼で窓による。えらくぴっちり閉まってる。なぜだ。何者がこのようなことを。だから息苦しかったのだな。窓を開けて、カーテンも開けて、部屋の中をしっかり換気する。はあ。やっと、体に酸素がしっかり満ちてきた。

夫が部屋に戻ってくる。「うわっ。寒。」「息苦しくて目が覚めた。苦しくて目が覚めた。窓が閉まってた。開けて寝たのに閉まってた。何者かが閉めていた。」「冷気と雪が窓枠から吹き込んで、あんまりだったから閉めたけど、よく寝てたし、気づくとは思わんかった。」「気づくよー。息苦しくて目が覚めたー。お願いだから閉めないでー。」「わかった、わかった。でも寒いよー。せめて暖房つけよう。なんでそんなに、酸素が必要な体になってしもうたんか、この人は。」その後は、窓をちゃんと開けて、新鮮な空気に満たされながら、眠った。

夜半から、雪がどんどん、ひどくなり、朝には雪が積もっていた。夫が、窓から外を眺めて、「さっき、自転車に乗ってたにいちゃんが、雪道で滑って転んだ。」と報告してくれる。

ホテルの無料サービスの、朝ごはんをいだたきに行く。フルーツ盛り合わせ。ヨーグルト。コーンスープ。チキンコンソメスープ。チーズパン。ぶどうパン。クロワッサン。チョコクロワッサン。ゆで卵。コーヒー。オレンジジュース。トマトジュース。を御自由に。

チェックアウトして、駐車場に行くと、車の上に雪がこんもり。雪を下ろしながら気づく。雪が軽くてさらさらだ。福井の雪と全然違う。湿度が違うと、雪もこんなに違うんだ。

湖の東側を、湖沿いにゆっくり走る。雪がごんごん降っている。湖は見えたり見えなかったり。鴨がたくさん浮いている。これだけいれば、とって食べようとも思うだろう。(鴨は冬の琵琶湖の名物だ。) 東側の湖沿いは、湖岸道路やさざなみ道路が整備され、湖を眺めながらのドライブが愉しい。「これで晴れて遠くまで見えたら、さぞかし風光明媚なんだろうねー。」と言いながら、雪見ドライブ。樹木を覆う雪を見ながら、のんびり走る。「はあ。滋賀県がこんなに雪深いとは、知らなかったね。」

福井に帰るまでずっと雪。帰って来てからも雪だけど、滋賀に比べると市街地はずいぶん少ない。福井まで戻ってくると、空気もしっとりとしていて、滋賀よりずっと温かく感じる。

愉しかったね。琵琶湖一周。

懸案の鮒ずしについては、つづき(参)、にて。