日本元気劇場

南はちみつ研究所」の蜂蜜をもらったあとの旅行後半。石川県南部にある日本元気劇場に赴く。前回さらりと、入場料のみで見物に来たときには、フリーパス券の値段設定が高いのか安いのかよくわからなかったため、今回は開園直後からフリーパス券を使って、いろんな劇場での見物に力を入れてみることにした。
男子のお芝居(新撰組のお話)を見て、お笑いを見て、お昼ご飯を食べて、ボートに乗って、女子のお芝居を見て、お化け屋敷に入って、忍者屋敷に入って、男子のお芝居(忍者のお話)を見て、その合間合間に夫は射的や弓矢や吹き矢や手裏剣投げやキックボール(サッカーボールを蹴って、数字が書いてあるボードを倒すゲーム)をしたりする。
劇団員さんは殆どが若者で、俳優さん、というよりは、ダンサーさんの要素が大きいか。どの人もよく稽古を積んでいるなあ、と感心するが、特に女子の人たちからは、練習の厳しさも彼女たち自身が求める完成度も、男子たちよりもかなり上にあるのだなあ、ということが伝わってくる。
お笑いでは、ラッシュライフという二人組みのお兄さんたちのお話の後、上原チョーさんという男性芸人さんの「てゅぅー」という音を使った話芸の披露。二人組みのお兄さんたちに比べると、芸歴も長い方なのか、滑舌や発声の訓練もかなり積まれているように感じる。内容としては、ネタがうけていないことをネタにする芸風なのかな、と思うほど、すべり具合(お客さんの反応が薄い具合)を何度も何度も嘆かれる。私は、中国地方、四国地方、関西地方、九州地方、北陸地方、と暮らしてきてみて、関西地方以外の地方の住民たちは基本的に、そんなに派手に面白がる文化をあまり持っていないと感じている。面白くないわけではなく、面白くても、自分がその場の笑いの渦のひとつとして能動的に活躍するような教育や訓練を受ける機会を得ていないため、あくまでも受身的な参加の仕方なのである。地方のお客さんの反応が、関西のお客さんの反応に比べて地味だからといって、面白がってないわけでも愉しんでいないわけでもないことを、芸人さんには理解してもらいたい。さらに地方においては、テレビの民放の数が少なくて、都会ではテレビ放映されていて認知度が高くなっているものや人物についての知識がないこともよくある。知らないネタ、ついていけないネタの多さに関しても、ご理解のうえ、芸の内容をアレンジしていただけると、地方の人間もよりいっそう楽しみやすくなるかもしれない。
お昼ごはんは、園内のレストランにて。私はとにかくうどんが食べたい気分だったので、何も迷わずさっさと「ざるうどん」の食券を購入する。夫は、券売機の前で、ずいぶん長いこと迷うので、「私は先に席についてるね」と、夫を置いて席に着く。券売機で買ったチケットは、そのまま席で持っていればよく、券売機から自動的に注文情報が厨房に飛び、注文の品が出来上がると、番号と商品名が放送され、カウンターまで取りに行くシステム。夫は結局、迷いに迷った末「元気海軍カレー」という名前の牛肉の塊がのっているカレーライスを注文していた。私のうどんは注文(食券購入)が早かった分早くできたので、先にいただき、早く食べ終わる。カレーを食べる夫を見て、「ずいぶん迷って選んでたけど、求めていたものに近かった?」と質問してみる。夫は、「ボンカレーの下をいくおいしさ、だと思う。全体的に、ちょっと悲しいかんじだ。」と言う。思いがけず期待はずれだったカレーに、ややしょんぼりとしていた夫だが、食後に立ち寄った射的で、お子様駄菓子を次々仕留め、夫の隣で見物していた小学生風男子にその駄菓子を譲る。するとその男子が「ありがとー、やったー!」と喜んでは「がんばれー!」と応援してくれる。その結果、夫はなにやら元気を取り戻し、もう一回射的をしたいから、私のフリーパス(射的終了スタンプがまだ押してない)を貸してくれと言って、再度挑戦。なるほど、食事でちょっとがっかりして少し元気を失ったり、その後射的でほしくもないお子様駄菓子を射止めて元気を取り戻したりする、その「元気」の変動具合が、「元気劇場」の名前に「元気」がついている所以なのかもしれない。
「ああ、今日は、一日よく遊んだね。」と、午前中から夕方までの自分たちの活動を振り返ってみたけれど、フリーパス券を使用しなかった場合の各施設の個別利用料金設定が高いのか安いのか、適切なのか高額なのかどっちなんだろうなあ、と不思議になってしまった。そのため、フリーパス券の使用が果たしてお得なのかどうか、そもそもフリーパス券の値段設定は、私にとって妥当なものだったのかどうか、よくわからないままとなった。
観劇系のものは、ある種「おっかけ」と呼ばれるような、固定のお客さんがついてこそ、盛り上がり成り立つもののような気がしている。日本元気劇場の劇も固定のファンを獲得しているのか、そのファンの人たちは、どれくらいの頻度でリピート観劇しているのか、その場合は、フリーパス券を使うのか、お気に入りの観劇料金だけを払うようにしているのか、気になるところである。