山菜野菜レストラン

五月四日午後旅記録。北陸道を順調に順調に、自宅へ向けて走行する。富山県から石川県に近づいてくると、にわかに交通量が増大する。ナンバープレートは、北陸地方のもの以上に、関西地方、中部地方、中国四国地方、遠くは九州地方のものまで。みなさん、高速道路千円だから、がんばって北陸まで遊びにきてくださったんだねえ、と感心しつつ、まだ先の長いであろう旅路を心の中で応援する。私たちはあともう少しで自宅に帰れるから、別に、サービスエリアやパーキングエリアでの休憩をしなくても大丈夫だけれど、遠方まで帰る人たちは、休憩必要だろうに、サービスエリアやパーキングエリアの駐車場がこんなに混んでいて、休憩を取ること自体にもエネルギーが必要なのは、それもたいへんだろうなあ。
順調に走行して、午後三時前には帰宅する。久しぶりの自宅。全ての窓を開け放って、空気を入れ替える。留守番していた観葉植物たちに、ただいま、と水をかける。洗濯物をごうんごうんと洗濯機にかけて、旅の荷物をざっくりと片付ける。洗濯機の仕事が終わるまで、少し体を横たえる。あああ、ううう、旅は旅で愉しいけれど、自宅の自分仕様の快適さは、ほんとうにくつろぐ。洗濯機が、ぴーっぴーっ、と、仕事済んだよ、早く干しな、のお知らせをしてくれたら、洗濯物を、ぱあんぱあんと干しきって、また次の洗濯をする。旅の間使っていた「洗濯物入れ袋」は、夫と私のそれぞれの旅行かばんに、たたんで片付ける。
あと、今日しておくことといえば、明日以降の食材買い出し。出かけるならば、夕ご飯も外で済ませてこよう、ということになり、何が食べたい気分かを話し合う。夫が「俺、昼が、たら汁だけで、しっかりお腹すいたから、今日は野菜レストランがいいかもしれん」と言う。
野菜レストランとは、とある農場経営の地元野菜を中心にしたバイキング形式の食べ放題レストラン。一人千七百円(以前は千五百円だったのが二百円値上がりしていた)で、九十分以内。併設の売店では、地元野菜が販売されている。バイキングメニューは、野菜の煮物や和え物や揚げ物もあれば、中華風炒めもの、洋風グラタン、パスタ、ピザ、など二十種類以上のおかずが並ぶ。主食と汁物としては、黒米のちらし寿司、白米、玄米、たけのこごはん、豚汁、カレー。食後のデザートは、白玉ぜんざい、牛乳ゼリーのおちらし(はったい粉)と黒蜜のせ、米粉のパンケーキ。肉や魚も使ってはあるけれど、メインは野菜で動物性たんぱく質は脇役。
この日は、山菜の天ぷら、山菜のおひたし、山菜の煮物もあった。旅の間中、山菜食べたいね、山菜食べたいね、と言いつつ叶わずにいたのが、旅最終日に思いがけず成就してうれしい。子どもの頃は、山菜のおいしさがもうひとつよくわからなくて、食卓に山菜が供されても、それほど喜んだ記憶がないけれども、大人になった今は、山菜独特のわずかなえぐみをおいしいなあ、と感じるし、この時期には食べたいなあ、と切に思う。食べたいものを食べたいだけ食べて、念願の山菜も思う存分食べて、お腹いっぱいでお店を出る。
お腹いっぱいの状態で、スーパーに、食糧買い出しで立ち寄る。けれどお腹いっぱいだから、食材に対する欲がちっとも湧かなくて、ひととおりの定番のもの、卵と、牛乳と、リンゴジュースと、ヨーグルトと、パンと、バナナと、あとは野菜とお肉を少しだけ買って帰宅。帰宅後も、何度か、夫と、ふとしたときに「山形たのしかったね」と言い合う。
以上、四月二十九日に出発してから帰宅するまで、全走行距離1240km。安全運転がんばったね。無事に帰宅してよかったね。旅の記録、おしまい。