白桃の気づき

七月十五日は私の誕生日で、七月十六日は甥っ子(弟の息子)の誕生日だ。
七月十五日の夕食後に、夫が白桃を剥いてくれた。この白桃は、岡山のおいしい白桃で、弟がお中元に送ってきてくれたもの。夫も私も白桃は大好物なのだけど、数年前から夫は、桃をはじめとするバラ科の果物を食べると、口の中や喉が痒くなる体質になり、以前ほど積極的には食べなくなった。夫が桃をどうしても食べたいときには、ヨーグルトまみれにして食べると痒くならずに食べられるらしい。また、加熱してコンポート風になっているものも全く問題ないらしい。けれど、やはり、生の、生鮮の、果物単品で食べたい時もあるらしく、「今日は食べる!」と宣言して果物のみで食べた後は、「くうううう。かゆかゆかゆかゆ」と言いながら、飲み物で口腔粘膜を覆ってみたり、うがいをしてみたりしてやりすごしている。そんなだから、弟からの白桃も、「みそきちが剥いてくれたら、少し分けてもらうけど、自分で剥いて食べるのはなあ」と夫が言うから、毎回私が剥いて私がたくさん食べていた。けれど、夫が「今日(七月十五日)は、みそきちの誕生日じゃけん、剥いてあげるよ」と言うので、私は喜んで、小躍りして、そうしてもらった。
目の前で自分で桃の皮をむきながら、実を切りながら、果実の香りを鼻で感じて、それから食べるのもいいけれど、遠くからほのかに香る桃の香りで予感を高めてから、「はい、どうぞ」とお皿にのせてスプーンをつけて差し出された白桃をいただくのは、また、別のおいしさがある。そして、いつもは、夫よりも、私がたくさん食べたり、夫は痒くなるからやめとくというから私一人で食べたりする桃も、今回は、半分こずつで、「おいしいね。おいしかったね」と言い合いながら食べたことで、仲良し気分とおいしい気分が、よりいっそう盛り上がった気がした。
でも、実際、今夜食べた桃のことを、今になって思い出してみると、私が食べたあの量はやはり、半分よりも少し多かったように思えてくる。私の誕生日だから、私にたくさん入れてくれたのか、夫は痒くなるから少なめにしたのか、そのへんのことはわからないけれど、私は夫に果物を剥いてもらうのが、なんだかかなり好きらしい、と、あらためて気づいた。人間大きくなるにつれて、いろんなことに気づくものだ。