手の甲の火傷(やけど)とパイへの愛

最近、ふとしたときに、手の痛みに気がついて、どこがどうして痛いのかしら、と観察してみると、手の甲に小さな火傷(やけど)ができていることがちょくちょくある。いつできた火傷なのか心当たりがないものの、気がつき次第、遅くなってごめんね、今から冷水冷却するからね、と、手の甲に挨拶してから、ジャージャーと水道水をかけて冷やす。火傷部分はごく小さな直径で、そんなに深いわけでもないから、水気を拭き取ったらそのまま、ハイドロコロイド素材の絆創膏を貼っておく。そうすると、翌日か翌々日には、かなりきれいに治癒する。その後も引き続きハイドロコロイドで保護することもあれば、別の絆創膏で保護しておくこともあれば、特別何か仕事中の作業の道具があたる場所でない場合には何も貼らずに治る力に任せることもある。
ところで、この火傷、心当たりがない、とはいっても、自分の火傷。今後の防止のためにも、原因や背景を明らかにしておきたい。
そこで、私が予想してみた火傷の原因は、最近にわかに再々焼いているパイと関係があるのではないか、というもの。
こう、パイがこんがりとおいしそうに焼きあがり、オーブンからそのほんわりとしたパイを取り出そうとするときに、オーブンの天板か、オーブンの縁のどこかか、焼き立てで熱くなっている耐熱皿のどこかに、手の甲が当たっているのではないか。それでもとっさに熱ければ、あつっ、とその場で気づきそうなものなのだが、きっと、パイが焼けた瞬間の私はあまりにも、焼き立てのパイに集中していて、焼き立てのパイを眺めることにうっとりとしていて、そしてそのパイを食べることに夢中になっていて、火傷の熱さに気づいていないのではないかな、と。
我ながら、あっぱれな集中力とパイへの愛ではあるけれど、身体安全の観点では、火傷を負ったときにはできるだけとっさに気づいて、そして、すぐに処置をしたい。いや、それ以前に、火傷を負わないように落ち着いてパイを取り出す人でありたい。
そういうわけで、パイへの愛は貫きつつも、今後は火傷防止及び早期対処の方向で注意力を作動させてみる。