水虫物語

ひるあんどんさんの水虫ネタ(「ひみつ」2011年7月29日)を読んで、どうしてもコメントを差し上げたくなり、しかしコメント欄に書いてみたものの、コメントにしてはあまりにも長文に仕上がり、かといって、どこも端折ることができず、コメントとして投稿することはあきらめて、おたよりをさしあげることにした。
その後、ひるあんどんさんから「これはぜひともどこかにアップしてもらいたい」とお返事をいただいたので、ううむ、どこにアップしたものか、と考えて、とりあえず、記録ということで、みそ記に記録しておくことに決定。
以下、私がコメントとして書いたコメントにしては長すぎる文章のコピー。


そのときの体調にもよるのですが、素足で、共用のスリッパを履いたり、ちょっと人様のサンダルを借りてつっかけたり、靴屋さんで試し履きなどをしたときに、チキーッ、というような、ピピーン、というような感触で、「真菌(水虫)が来た!」と感知することがときどきあります。
そんなときには可能であれば、すかさず足全体と特にチキチキ感じる部分をぬるま湯と泡立てた石けんでよく洗います。そしてタオルで足の水気を指の間から爪の付け根まで充分に拭いてから、ドライヤーでしっかりと乾かします。そうするとだいたいそのチキーッとした気配は去るのですが、それでもなお怪しいときには、私は念の為に手元にある抗真菌薬と抗生物質が混ざった軟膏(市販のクロマイN軟膏)を塗ります。
チキーッの気配が去るまでは、足洗浄とドライヤー乾燥、または、清浄綿(除菌ウェットティッシュでも)での清拭とドライヤー乾燥、水洗い環境やドライヤーがないときには清浄綿で拭くだけでも、を、しつこいくらいに繰り返してやります。
いったん水虫の症状(見た目の皮膚の変化とかゆみやいたみなどの違和感)が出てしまってからは薬の塗布が必要になりますが、症状が出る前であれば洗浄乾燥だけで退治可能で、症状が出てからも洗浄乾燥と併せて薬を使ってもらうと早く(といっても三ヶ月から半年以上は薬を毎日塗る必要がありますが)しっかりと治ります。治るのですが、水虫と長年共生しているタイプの方々におかれましては、この方法をおすすめしてもなかなかご自身の足のお世話と手入れをなさいませんし、ご自分の足の水虫の存在にもその症状にもたいへんに寛容でいらっしゃる方が多いです。その様子は、もはやちょっと変わった小さなペットを愛玩目的も含めて飼っているかのごときです。
体調が絶好調ではないときには、特に共用の履物は靴下(足袋タイプか五本指タイプの方がより安全)をはいてから履くようにするか、一時的にプロポリスなどを多めに飲んで抵抗力をぐっと高くしてから素足での共用履きに備えるなど、水虫との攻防には各種の技がございます。
ちなみに、水虫でない足の湿疹皮膚炎のときには、チキーッ、がないかと思います。
どちらにしても、水虫道のベテランになるまでの間は、まずは皮膚科にて見極めてもらって対処するのが大正解です。


以上、コメントここまで。
共用スリッパを利用することが想定されるときには、とりあえずスリッパの内側に履く靴下を持参するようになってから、私の人生におけるチキーッは激減した。
内履きスリッパに履き替える病院医院にかかるとき、靴をぬいでスリッパにはきかえて入っていく選挙会場に行く時、共用スリッパを利用する温泉施設や宿泊施設に行く時、おぼえていれば、自分の靴下を持って行き、スリッパを履くときには事前に靴下を履く。
まあ、それでも、出かけるときの靴がサンダルの季節などだと、うっかり靴下を持参するのを忘れることもあるのだけど、そのときには、自分の身体に、これから素足で共用スリッパを履くけれども、そのつもりで抵抗力やや高めの設定にお願いします、と頼むと同時に自分でもそれを意識すると、意識せずにいるときよりもチキーッにやられることが少ない。
水虫のご相談をお客様から受けた時に、ごくたまに、このチキーッの感覚がわかる方がいらっしゃって、そういうかたは、私が提案する対策についても、わかるわかるなるほどね、と言って、丁寧に実践してくださる。その結果、素早くしっかりと治る。「このまえここで教えてもらった方法がよかったわあ、今度からもまたチキーッときたときには、ああすればいいんやね」と喜びを語ってくださる。
けれど、多くの水虫治療薬リピーターのお客様方は、私の提案に対して「そんな手間のかかることできるわけがないだろう」と一蹴される。そして、人によっては「ええんや、こうしてまた今年も水虫の薬を塗る季節になったんやなあ、いう、風物詩みたいなもんやからな。せっかくやから、この機会に、水虫の薬、しっかり売って儲けたほうがええで。そんなみんなが真面目に対策して、水虫の人が減ったら、水虫薬が売れんようになって困るやろ」と、こちらの商売の心配までしてくださるなど、水虫の存在にも水虫薬の存在にもおおらかな懐を見せてくださる。
本当に体力がしっかりとしているときには、少々のことではチキーッにはならないのだけれども、知らず知らずのうちに少し疲れ気味であったり何かの背景があると、普段はなんともないところでもチキーッにやられてしまう。まあ、やられたときにはやられたときで対処するしかないのだけど、やられたということは、そういうことだったのだろうな、と、そのつもりで自分の健康状態の観察をしてやる機会なのかもしれない。
とはいえ、風物詩として、夏ごとの逢瀬を心待ちにしておられる方にとっては、せっかくの逢瀬だし、愛しさのあまり、ほぼ通年、完全にはいなくならない程度に飼育するような加減で薬の塗布を続けられる(塗ったり塗らなかったり、きちんと数ヶ月以上継続して塗り続けなかったり)。こういう方はチキーッの不快はあまり感じられないようで、水虫によるかゆみやいたみに対する耐性も高い。私のようにわずかなチキーッにビビるような小心者とは違う。私はわずかなチキーッにビビると同時に、足環境の乾燥傾向が高く水虫の定着には適していないことと、ある種の健康オタク傾向があり、チキーッときたら、疲労回復と体力増強と足の清潔に努めまくってしまうので、本格的な水虫症状になる前に、本格的な水虫治療薬を使う前に、水虫との縁が切れる。
別に、水虫との縁を育みたいわけではないのだけれど、特に重篤感染症のときなどには、真菌(水虫、カビ)を排除することが非常に重要になることも知ってはいるのだけれども、水虫のチキーッに対するビビリのない豪胆な方々に対するこのある種の憧れのような、勝ち負けで言うと負けのような気分は、これは、なんなんだろうなあ。