立山散歩その一

夫の強い勧めにより、富山県立山を訪れた。
数年前にふもとの立山市には温泉目的で滞在したことがある(2009年8月1日日記参照)。
当時は、山登りの出で立ちでケーブルカーに乗り込む人々を「がんばるなあ」というような気持ちで見送る気分で過ごしたけれど、今回は当時見送ったケーブルカーに乗って、そしてさらにバスに乗り換えて、標高2451mの場所まで行く。
夫が立山に登る時には、その標高2451mの地点から、さらに自分の足で山の尾根を歩いて、標高3000mを超える地点を目指す。
しかし、私は斜面に対する興味がなく、歩くのは好きだけど歩くなら平坦なところを歩きたい主義主張の持ち主であるため、2451mが最高峰で十二分以上に満足。
2009年当時にはまだ山登りを趣味としていなかった夫は、当時の私たちを振り返って、「立山にまで来ておきながら、しかも二泊もしながら、立山に登らずに、曼荼羅見たり砂防博物館見ただけで帰るなんて、おれら、挙動不審過ぎる」と言う。当時泊まった旅館の従業員の人達や同じ日に泊まったお客さんなどに、「今日はどちらまで登られたんですか」と訊かれて、「いえ、どこにも」と答えた時の、彼らの「えええっ? なにそれ、どういうこと?」といった風情の表情の意味が今ならすごくよくわかる、と夫は言う。私は今でも「いいじゃん、そんなに、高いところにこだわらんでも。山に登らないからこそ曼荼羅悠苑にも足を伸ばしたし、砂防博物館にも入り浸れたんじゃん」と思う。
しかし、この夏から秋にかけて二度立山に登り、それ以前には雪の回廊観光に行き、その前にはみくりが池温泉に入り地獄谷観光を行った夫は、とにかく、立山の山々の景色を一望できるのはあそこならではのことだから、一度は観ておいたほうがいいから、ぜひ一度一緒に行こう、と強く奨めてくれる。
という話を、先日訪れた美容院で美容師さんに話したら、「ああ、それは、ぜひぜひ行ってください」と、美容師さんがご家族で立山国民宿舎に泊まったときの思い出話を聞かせてくださる。
人様が奨めてくださるものすべてに対応はできないけれども、できるだけ素直に試してみる基本姿勢はせめて姿勢だけでも持てればと思うから、斜面も、標高の高いところも、人の多いところも全然得意ではないけれど、行ってみよう、と決める。
夫が「安心して。行きも帰りもおれが運転するから」と珍しく申し出てくれるから、やったー、と喜ぶ。
私が立山に行く気になったのを喜んだ夫が、昨夜、立山の気象情報をインターネットで確認して、「うわっ。立山、寒いぞ。こっちと比べたら、えーと、プラスマイナスゼロ!」と言う。
「プラスマイナスゼロだったら、こっちと同じになるじゃん」
「あ、ちがった。摂氏0度。12月上旬くらいの服装を用意したほうがいいよ」
「現地で寒いのは全然かまわないけれど、夜はおうちのお布団であったかく眠りたいから、日帰りで行こう。明日(今日)起きてみて、気が向かなくなれば中止もあり、くらいで」
そんな、ゆるゆるの立山決行の決意ではあるけれど、リュックサックに長袖シャツや防寒具などを詰め込んで、準備よし、の状態で眠る。
そして、今朝、夫の「すっごくいいお天気だよ」という躍動感のある声を聞いて目を覚まし、ゆっくりと身支度をして(持ち物は昨夜のうちに用意してある)予定通りに出かける。
出発後の旅路の記録は、また後日。
本日はこれにてお布団へ。