山スカートで筋肉増強

数週間前の週末、近所のスポーツ用品店と登山用品店に、買い物に出かけた。買いたいのは、琵琶湖一周散歩に適した散歩関連用品。スポーツ用品店では吸湿速乾性の長袖シャツを買い、登山用品店では軽量リュックサックと厚手の靴下と速乾性下着を買った。
今回の九月二十三日の立山散歩では、そのときに買った下着を着て、靴下を履いて、リュックサックを背負った。長袖シャツを着るには、まだ、下界は暑かったから、自宅からは半袖で出発し、現地に着いてから長袖を上に足して着た。速乾性下着は素晴らしく速乾性があり、おしりと胸が汗でべたつく感触が一切ないのが素晴らしい。ただし身体のラインを美しく見せようだとか、そういった方面の機能はない。
夫が山に行く時には、山用品店で買った独特の長ズボンを穿く。普通の長ズボン(最近はパンツと呼ぶものかもしれない)は、右足左足それぞれに、前身ごろと後ろ身ごろの生地があり、四枚の布を縫いつなげてズボンの形にしてあるけれど、夫が買ったものは、膝のところに切り替えの縫い目がある。膝下で左右前後ろで四枚、膝上に左右前後ろにもう四枚、合計八枚の生地を縫い合わせてズボンとしてある。その膝部分の切り替えと縫い目のおかげで、普通のズボンとちがって、ズボンそのものの膝のところが少し膝を曲げたような形になっている。この少し曲がった形のおかげで、膝を曲げ続けて斜面を歩くような山登りの場面では、太股部分の布のツッパリ感がなく快適に歩けるのだろうなあ、と、想像しながら、洗濯したそのズボンを干していた。生地は速乾性だからすぐに乾く。
それで、私も、もしも買うなら、夫が履いているそのズボンと同じタイプのレディースのがいいなあ、と思っていた。が、お店では出会えなくて、またのご縁をと思い、そのときはズボンの購入は延期。
しかしその時に店頭で見た、あれはなんというのだろう、腰から足首までをピタリと覆うような形状で、太ももや膝やふくらはぎやスネのところに筋肉補助の機能が持たせてあるタイツのようなそんな衣類。タイツのようであるとは言っても、普通のタイツに比べるとずいぶんと分厚い。その上にズボンを重ねて穿くには分厚すぎるかんじの分厚さ。その分厚い筋肉補強タイツを見て、ああ、これだと、筋肉が補強されて、特に私の場合は膝がラクなんだろうなあ、いいなあ、でも、これだけでは脚全体がムチムチしていて、脚線美を売り物にしているわけではない私としては、このまま歩くのは見た目的な躊躇があるなあ、タイツやストッキングははいているのにその上にスカートもズボンも何もはいていないような躊躇があるなあ、これはいったいどうやって使うものなんだろうなあ、と不思議に思いながら、そのときには一人でそう思っただけで帰った。
それが今回立山に行ってみたら、女性のちょっと本格的な山登り山歩きファッションの人たちが、その筋肉補強タイツをはいている姿を何度も目撃した。そして、彼女たちは、そのタイツをそのままそれだけではいているのではなく、腰から膝上十センチくらいの長さの、あれはパレオというのだろうか、短いスカートのような腰巻のようなそんなものを巻いておられた。
なるほど、あの筋肉増強(補強がいつのまにか増強に)タイツは、あのように着こなせばよいものなのか、腰巻きをすれば冷え対策にもなるし、見た目もタイツ一丁なかんじよりも気軽になるなあ。そう思って、夫に「山用品屋さんに連れていってもらった時に、もうひとつ着こなし方がわからなかったタイツだったけど、みなさん上手に着てはるね。タイツだけじゃ使い方をどうしたものかと思ったけど、パレオを合わせたらいいんやねえ。しかもそれ用の専用っぽいパレオがちゃんとあるんだねえ」と伝える。
「ああ、あれやろ。山スカート」
「へえ。あれ、山スカートって言うんだー」
「タイツみたいなやつの上にはいてるスカートみたいな腰巻きみたいなやつのことやろ」
「うん。あれって、山用品屋さんで売ってるんかなー」
「売ってる」
「そうなんやー。この前は、世の中にそんなものがあると知らずにいたから、お店ではその存在に気づきもしなかった。あのタイツをはいたら筋肉がラクなんだろうなー、とは思ったんだけど、着こなし方がわからんかった。いやあ、立山に来てよかったわー。あのタイツの使い方がわかったのがよかった」
「そうやなー。下界では、あの格好してる人を見ることあんまりないもんなー」
というわけで、琵琶湖一周散歩で今後、ああ、やっぱりちょっと下半身衣類を工夫して、私の脚や膝の負担を減らしてやりたいなあ、と思うようになったときには、あの筋肉増強タイツと山スカートを試着してみて、よいようであれば買おうと思う。