筋肉増強タイツの試着

筋肉増強タイツを一度試着してみたいな、と思ったから、夫が山用品屋さんに行く時には一緒に連れて行ってほしいと頼む。すると買いたいものがあるから今日行くと言う。では、ご一緒に、とともに出かける。連れていってほしいと言ったけれど、車を運転するのは私。
山用品屋さんは、本日ポイント三倍セールで、その案内を葉書などで受け取ったお客さんたちで店内は大盛況。
早速筋肉増強タイツのコーナーを探す。おおー、これだー、と思って手にとって見ていたら、店員さんが「よかったら試着してくださいね」と声をかけてくださる。そんなに種類はないから、ワコールの縫い目なしのタイプと縫い目ありのタイプと、別の会社のサポートタイツとを試着室に持ち込んではいてみる。
ぴったりとしたタイツだから、はきやすくするためにどこかにファスナーでもついているのかな、と思ったけれど、そんなものはついてなくて、ピタピタのタイツをうんしょうんしょ、と少しずつ持ち上げながら穿く。普通のタイツやレギンスやストッキングやパッチなどのように脱ぎ穿きがらくなわけではない。
が、足首から腰まで全部穿くと、腰も股関節も膝もふくらはぎもスネも全てが軽くてラク。うわー、すごーい、ラクー、と思って、足踏みしてみたり、立ったり座ったりしてみたり。わーらくらくー。
では、次のに穿き替えましょう、と一着目を脱ごうとするが、脱ぐのが手間。何段階かに分けて、順々に下ろしてゆくけれど、簡単にするりとは脱げない。これはトイレの脱ぎ穿きにもそれなりの手間と時間がかかると思ったほうがよさそう。であるとしても、下半身がすごくラク。ワコールの縫い目なし軽量タイプは一万七千円弱という高価なお値段だけれども、そのお値段分の価値は充分にある。
縫い目なし軽量タイプワコールは17000円。縫い目ありワコールは15000円。他社のサポートタイツは13000円、というところか。三種類試して穿いてみたところ、やはり値段の順でサポート力も穿き心地も優れている。
試着室を出て、それらの試着用タイツを売り場に戻しに歩いた時に、サポートタイツを試着するまでは全然気になっていなかったのに「う、膝が、う、腰が、痛い」と感じる。「すごくらく!」と思った直後の「普段」は「不安定で痛い」になるのだなあ、とあらたな発見をした気分。
筋肉増強タイツを穿いた時にその上に穿く山スカートは、6000円から13000円という価格帯。薄手のものもあれば、冬用のダウン素材のものもあり、いろいろ。
山用品は全体的に値段が高めだけれども、軽量化に関するあくなき追求がただことではなく、どの衣類を手にとっても、ああ軽い、と感じる。
筋肉増強タイツは女性用だけでなく男性用もあるが、男性の場合はどのように着こなすかというと、それもまたそれ用の短パン(といっても膝丈くらい)がある。
山スカートとコーディネートするための山用タイツはそれはそれで筋肉増強タイツとは別にあり、特に女性用は色とりどりで柄も様々で華やかで、そして軽い。
それから女性向け山衣類を見ていて思うのは、在庫してあるサイズの主流がXS、S、Mで、Lは少数、LLはもっと少数、XLはごくわずかというよりほぼない。とはいっても、ものによっては輸入製品も多いため、日本メーカーのサイズであればLを選ぶところをそのシリーズではM表示のものを選んだほうがよい、という場合もあるのだけれど、そういう事情のある製品を除くとしても、XSやSの在庫が豊富。
やはり自分の重量を支えて高い場所に身体を運ぶような動作は、小柄で軽量なほうがやりやすいから、山を歩くことを趣味にしようかなと思う人は、そういう小柄で軽量な体型のお客さんが多めになるのかもしれない。
今日は私は筋肉増強タイツと山スカートの見学だけのつもりだったから、それで満足して、あとは、山用携帯食品いろいろを見学。いろんな食べ物があるのだけど、どれも保存性と携帯性に優れている。たとえばチキンラーメンどん兵衛のうどんなどの本来はカップタイプのカップをなくしてすべての具材を真空パックで包装してあるものは、持って上がった山の上でコッヘルか大きめのマグカップに入れてお湯を注いで食べるもののよう。山用携帯食品の世界は、これはこれでこういう市場向けに開発分野があるのだなあ、と静かに感動する。
夫は冬用の軽量上着を買いたかったらしいのだが、迷わずこれ、と思える出会いがなかったので、今回は見送り。そのかわり、帰り道のドラッグストアでバンテリンコーワサポーターの膝用大きめを二個(両膝分)購入。帰宅して両膝に装着して「うん。いいみたい」と満足そうにしばらく過ごしてから外したときに「うわっ、サポータ−つけてたのをいきなり外すと、なんか両膝がガクガクフラフラ不安定な気がする」と言う。
「でしょ、でしょ。私も、筋肉増強タイツを穿く前には気になってなかった腰や股関節や膝の状態がね、筋肉増強タイツを脱いだ時に突如不安定で痛い気がしたもん。サポートってすごいけど、サポートなしのときって知らず知らずのうちに大きな負担が身体にかかってるんだろうなあ」
「ほんとやなあ。みそきちがお店でサポートタイツを脱いだあとに腰と膝が痛いって言うた時、またこの人大袈裟な、と思ったけど、全然大袈裟じゃなかったんやなあ」
「ね、ね、そうでしょ」
私は腰も股関節も太ももも膝もふくらはぎもスネもサポートしたほうがよいと思うから買うとしたら筋肉増強タイツにすると思うけれど。夫は気になるのは膝だけだから、タイツの脱ぎ穿きの手間を考えたらサポーターのほうがいいような気がするな、ということでサポーターで様子を見るとのこと。
夫は山へ、私は琵琶湖へと、行き先は別々だけど、こうして同じ山用品屋さんに一緒に行くくらい、趣味の歩み寄りというか接近が見られるようになったことが興味深い。
そして山用品を見ていて思うのは、その機能と軽量化を追求した品々は、介護の世界に応用できそうだな、ということと、デザインがスポーティーでおしゃれなものが多いから介護用として使う時でも元気で華やかなきもちで使いやすいのではないかな、ということ。
そう思いながらお店を出たときに、腰を曲げて杖をつく高齢の女性と彼女を補助して歩くご家族とすれ違う。ああ、やはり、高齢者の歩行補助用具として、山用品を使うことを思いつく人はすでにいるんだなー、行き先が山かどうかは別として、たとえばどこかの神社などにお参りしたいと思ったときにでも、ただの道を歩くにしても、階段や坂道を登ってお参りするにしても、その行程が少しでもラクなように、軽量の衣類で身体を快適に保ち、機能性衣類で必要な部分をサポートし、杖も軽くて両手で身体の両側を補助するストックを使ったほうがらくだろうなー、ストックは夫も山にのぼる時必ず持って行って使うもんなー、と、中高年の歩行補助用品としての販路拡大を思い願いつつ帰路に着く。