月岡温泉4/29

今回の旅は、四月二十九日出発。
前々日も前日も私の仕事が夜遅くまでかかり帰宅が遅くなった。午前中ゆっくりと寝たもののなんだか頭がはっきりとしない状態でとりあえず荷造りをする。
お昼前に荷物を車に積み込む。出発しましょうか、と思ったところで、おっと、家の中に私の着替えを詰め込んだキャリーバッグを置き忘れてきたわと気づく。たいへんたいへん、と車からおりて自宅に居残る鞄を取りに戻る。
「うーん、あぶないあぶない、旅行のあいだじゅう今穿いてるパンツ一枚で過ごさなくちゃならないところだったわ」
「パンツくらい旅先で買えば大丈夫なんじゃないん?」
「買ってすぐそのまま穿けるわけじゃないじゃん、洗ってから身につける必要があるじゃん、特に私の場合ちょっとしたことで肌に反応が出るし。穿き心地のいいものでないと身体が拒むし。パンツだけじゃなく靴下も着替えのシャツも全部新しく買ったりはしたくないよ」
「思い出してよかったね、じゃ、いきますか」
出発したらお昼ごはんに野菜レストランに入る。自家製野菜の料理をバイキング形式で出すお店。野菜レストランとはいっても菜食主義レストランではない。少量の肉も使われる。そして五葷抜きレストランでもないので、私が食べられないメニューもいろいろある。それでもいろんな種類の野菜料理を食べることができる。いろいろ食べたそのものが身体の隅々まで染み渡る。ぼんやりとしていた頭が少しずつはっきりしてくる。やはり食べるものは身体をつくるものだなあ、と、しみじみと思う。ここしばらく仕事で疲れて食事の摂り方がおろそかになっていたことに思い至る。
北陸道を夫の運転で北へ北へと走る。今宵の逗留は月岡温泉浪花屋旅館素泊まり。途中から運転をかわり私の運転で浪花屋着。このお宿に泊まるのは三度目。部屋に入ったときに夫が「この部屋、一回目に泊った時と同じ部屋だ」と言う。
「いやいや、ちがうよ、ここは一回目に泊った部屋の上の部屋。一回目のときはこの下の一階の部屋だったよ」
「そうか。部屋の作りが同じだから同じ部屋かと思った」
「うん、つくりは同じだね。二回目のときには同じ二階の真ん中の部屋だったよ。今日は別のお客さんが泊まっとってじゃね。あ、猫の声がする、あの猫現役なんじゃね」
去年この宿に泊まった時に接客をしてくれた猫はまだ元気だろうかどうだろうかと話しながらこの宿に来たので、姿は見えずともその声が聞こえるとなんだか安心する。
夕食は宿の近くの料理屋さんへ。山菜のおひたしと、山菜の天麩羅と、タコの唐揚げと、つきだし二種。
夕食の後、温泉まんじゅう屋さんへ向かうが、もう遅い時間でシャッターが半分おりている。まだ買えますか、と尋ねると、かわりダネのものは売り切れてますが普通のまんじゅうなら夕方作ったばかりのがありますよ、ということで八個購入。おまけに一個余分につけてもらったのを宿に戻ってから食べる。残りは翌朝の朝ごはんに。
このお宿の素敵なところは、到着時だけではなくて、翌朝部屋の外に新しく熱湯を入れたポットを置いてくれるところ。新しいお湯だけでなく茶器のセットも新しいものが置かれる。起き抜けには熱い紅茶に豆乳を入れて飲みたい私にとって、頼まなくても熱いお湯をもらえるこのサービスはうれしい。朝ごはんは熱い紅茶と前の晩に買った温泉まんじゅうゆでたまご
四月三十日は福島県二本松市岳温泉(だけおんせん)を目指す。目的は夫のみではあるが五月一日の安達太良山(あだたらやま)登山。私はその間お宿で温泉に入ってお布団でごろごろするのがたのしみ。