狐の嫁入り5/4

苺でお腹いっぱいになってから、狐の嫁入り資料館に。
前夜のお風呂で夫に狐の嫁入りのことを教えてくれたおじちゃんが言っていた催し物は五月三日の開催で、私達が行った四日にはもう終わった後だった。
資料館の建物はとても丁寧で立派な木造で、大きな柱と柱をつなぐ梁の上に一体(一匹?)あたり手のひらくらいの大きさの狐の嫁入り行列人形がのせてある。あんな高いところにどうやってのせたんだろう。かわいいなあ、かわいいねえ、と、一人で梁を見上げてぼんやりと見つめる。夫は資料館の隣にある別の建物を見学しに行っていていない。
建物一階部分は売店と畳の間、二階はさらに立派な畳の間、さらに階段を登ると最上階は天守閣のような展望台のようなつくりになっている。
二階のはしのほうには「火の玉」や「狐火」に関するフォーラムかなにかのパネルが展示してある。
その横には地元小学生が調査発表した「狐の嫁入り」と「狐火」についてまとめた大きな紙。調査した年代が小学校三年生から四年生くらいなのか、私の脳としては漢字で書かれると思い込んでいる文字が平仮名で書かれているのが新鮮。実物とは多少異なるだろうがだいたいこんなかんじ。
『きつねのよめ入り行れつのときに保育えんの人がおどるのはなぜですか』
『参加する人が少なくなってきているので保育えんの人にも何かしてもらえないかなということで保育園の人にも行れつでおどってもらうことになりました』
『地元の小学生が行れつで歩くのはなぜですか』
『参加する人が少なくなってきているので小学生にも参加してもらおうということになりました』
小さな町での行事で、地元の大人だけでは狐の嫁入り行列が構成しにくくなってきているのだろうか。
だけど、キツネメイクをした小さな人たちが行列に並んで踊っているのは可愛らしくて見物するほうも微笑ましいことだろうなあ。
狐の嫁入り資料館では、希望すれば「狐メイク」体験ができる。狐のお面作りもできる。
狐の嫁入り行列は雨天決行の行事で、前日五月三日はたいそう雨が降ったけれども、雨の中狐たちは無事に嫁入り行列を行ったのだそうだ。
狐の嫁入り資料館の大きな窓から雨が降る外の緑を眺める。夫が隣の建物から戻ってきて、窓際の私の隣に座る。
「お昼ごはんをそろそろ食べたい」
「うわー、すごいねー。私はまだ苺が効いててなんにも考えられない」
「この近くで手頃なところがあればそこで」
資料館を出て通りに出てみるが、それらしいお店はない。では帰り道の途中のどこかで探そう、ということになる。
車のナビの設定を自宅にして走行する。高速道路のインターチェンジの入り口にあたる交差点で道路沿いに「きのこ園」の看板を見つける。夫が「きのこ園行ってみたい」と言う。では行きましょう「きのこ園」。どんなところかな「きのこ園」。