ブラインドネス

たぶん一ヶ月くらい前にケーブルテレビで見た映画。
たまたま開始時に遭遇して、あれ、この声と英語のかんじは耳で聞いた記憶のあるものだわ、誰かしら、と思って見始める。
突如目の前が真っ白になって目が見えなくなったその男性は日本語と英語を話す。日本語のほうはなんだか少し金城武さんの発声発音等にも似ているように感じられるどこがどうとは言えないけれどちょっとだけ第一言語っぽくない風味があるようなあるような。
かといって日系アメリカ人の日本語教育をあまりしっかり受けていない俳優さんに無理やり日本語の台詞を言わせているときほどの違和感はない。アメリカドラマでは日本語を話す役柄として日系以外にも韓国系中国系マレー系など東洋っぽければそれでいいやろ的に俳優さんを配役することがある。そういうときには「カレソナコトナイ(「彼はそんなことはしない」という字幕が出る)」という台詞を聞き取ることになりドラマに対する集中力がいっきに低下する。しかし、とりあえずドラマとして成り立つのであれば、言語の正確性は特に気にしないよ、と、おおらかにドラマを作り続ける彼らの精神性を見習い、そんなところでつまづくことなくドラマの流れに最後まで身を任せて乗り切れる人に成長したい、と願っているので、そのうちそうなれるんじゃないかな、と思う。
目が見えなくなり途方にくれて自宅のソファで寝転ぶ男性に帰宅した妻が「家の中ぐじゃぐじゃにして片付けもせずなんなのよ」という意味のことを日本語で話す。この役を演じるのは木村佳乃さん。彼女も日本語と英語の両方を話す役柄。
お話自体は最初に目が見えなくなった男性に続いて、世の中の大半の人が同じ症状に見舞われて世の中の機能が停止するさまが描かれる。しかし感染性のある症状という設定なのだが、彼らが暮らす地域以外の外国等がどうなっているのかには触れられていなかった気がする。まあそういうことはよくあることなので、そこも気にせずおおらかに視聴。
で、話をもとに戻すが、日本語と英語を話す男性俳優さんは伊勢谷友介さんであった。ああ、聞いたことのある英語の音だと思ったら白洲次郎さんでしたか、と腑に落ちる。白洲さんのときにはもう少しイギリスっぽい輪郭の音で話していたかもしれないが、音のかんじは共通だ。
でも、待てよ、白洲次郎さんだということは「龍馬伝」の高杉晋作さんでもある、ということだよな、と気づく。高杉晋作さんはもっと日本語がふつうに滑らかだったけど、なんだろう、周りの英語の台詞の音量やトーンに合わせて話そうとすると日本語の発声や発音の雰囲気が少し変わるのかしら。そういえば木村佳乃さんの日本語も前半なんとなく日本語にしては音量かなあ何かなあよくわからない何かがいつもの木村佳乃さんとは違うように感じたが、中盤以降は私の耳のほうが慣れたのかあまり気にならずに見ることができた。
伊勢谷友介さんの出世魚形態変遷としては、ブラインドネス白洲次郎龍馬伝高杉晋作、の順だろうか。
伊勢谷友介さんが伊勢谷友介さんであることがわかり納得安心してその後も鑑賞を続ける。
しかし、私は劣悪な環境において独裁的な行為が横行する場面を得意としない。あまりに負担が大きい時には近年は堂々とその部分を飛ばす。今回はケーブルテレビでの放映なので早送りはできないが、他のチャンネルに変えて別のものを一時的に見て、ほとぼりが覚めた頃に「そろそろ見ても大丈夫かな、どうなっているかな」とチャンネルを戻して確認しては「ああ、まだダメだ、またあとで見に来よう」と別のチャンネルに戻る、などの方法を用いて視聴。
夫はそばにいたが、この映画にはまったく興味を示すことなく、PCでヤマレコ(山歩きをする人たちが山歩きの記録を記すところ、写真掲載も多数あり、夫は投稿はしたことなくもっぱら見るばかり)や各種山情報を見て各地百名山に思いを馳せていた。私がぜえぜえ息を切らせながら「ううっ、勇気をもって撤退だー」とチャンネルを変えるときにときどき「がんばれー」と応援はしてくれていた。
最後まで見た。