旅支度

これまで会津方面に何度か旅行して、その道中で通り過ぎる道沿いにある温泉街で毎回「あー、ここにも一度来てみたいなー」と思うところがあった。福島県新潟県の県境近くの新潟県がわ。
その温泉郷をwebで見て、あらまあ素敵ねえ、ここの施設のこのプランはぜひとも利用してみたいなあ、と思うものを見つける。日帰り入浴で、部屋利用なしで、食堂でお昼ごはんをいただく、そのお昼ごはんが竹籠に盛られた地場産野菜料理(肉魚も少しは使う)というもの。平日のみのサービス提供となっているが、予約カレンダーを確認すると4月30日5月1日2日も営業ありまだ空席ありの表示。
夫に私の希望を伝えて「いいよー、どうぞー」との返答を得てインターネット予約を行う。個人情報を記入したあとの欄に「伝統の「鯉料理」が料理メニューに入ります。お召し上がりいたけない方はご記入ください。(別の魚へ変更致します)」「食物アレルギーで食べられない食材が御座いましたらご記入ください」「もしよろしければ、当館をお知りになったきっかけをお教えください」と書かれている。野菜料理とはいっても五葷も入ることはあるだろうから出てきたものを見て食べられないものは残したとしてもこの写真のメニューのかんじなら大半食べられそうだなと思っていたが、食べられないもの対応もしてくれるんだー、すごーい、うれしいー、とよろこんでリクエスト欄に記入する。「可能な範囲で外していただきたい食材があります。タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、ピーマン、チョコレート、チーズです。当日たのしみにいたしております。よろしくお願いいたします」送信。
予約受け付けしました、のメールがすぐに届く。「プリンターをお持ちの方はこのメールを印刷してご持参ください」と書かれているが、我が家にはプリンターはない。予約番号を控えて持っていくことにしようと思う。でも念のため予約がとれているかどうかとリクエスト内容が通っているかを電話で確認しておいたほうがいいかもな、とおもいつつ就寝。
チェックアウト時間を過ぎた頃を狙って電話をかける。日帰り利用予約の確認を希望する。予約そのものは問題なく受け付けられており、休憩用の個室などはないことと日帰り利用におけるチェックイン時間とチェックアウト時間の案内がされる。「はい、了解です、備考欄でリクエストしておきました抜いてもらいたい食材については対応していただけそうでしょうか」と質問する。電話対応のスタッフの方は「申し訳ございません。まだ板場に確認はいたしておりませんが、こちらのプランは特別にたいへんお安く提供しているプランでして、基本的に材料に関するリクエストには対応が難しいかと」と言われる。
「では、当日これらの食材が入っているものについては食べる時に残せるように説明していただけるようお願いはできますでしょうか」
「お出しするときにご説明ということですね。そのように伝えておきます」
「では当日よろしくお願いいたします」と電話を切る。
んー、まだ板場に確認していないということは、実は板場的には問題なく可能なのか超面倒くさいレベルで不可能なのかわからないということなのではないかな、可能なら行くけど不可能であれにもこれにもタマネギやニンニクのエキスが旨味成分として使われていてほとんど食べられないということであればやめておいたほうがいいよね、と思い再度電話する。
先程は男性スタッフだったが、今回の電話の受け手は女性。話始めてすぐに「ああ、先程男性の係の者がお受けしたお客様ですね、すぐに替わります」と電話を取り次がれる。先ほどの男性の方が電話に出てこられる。
「たびたび恐れ入ります、先程の食材の件なのですが料理担当の方に食べられない食材を外してもらうことが可能かどうか確認して折り返し連絡いただくことはできますでしょうか。どうしてもそれらの食材が入る可能性が高いということであれば、事前に飲んでいくお薬の種類も変わってまいりますので」
「それは、アレルギーということでしょうか」
「そうですね、食べると身体の具合が悪くなるので、可能な範囲で注意しております」
「アレルギーと好き嫌いとでは違ってくるかと思うのですが、こちらのプランは特別にたいへんお安く提供している内容でそういったご要望にお応えするご用意がないんです」
「まあ、そうなのですか。たいへん魅力的でぜひ利用したいプランだと思ったのですが、インターネットの申し込み欄にアレルギー食材などあれば書くよう指示があったものですから、可能な範囲で対応していただけるものだとばかり」
「申し訳ございません。予約フォームの特性上すべてのプランの申し込みフォームにその文言が出るようになってはいるのですが、実際にはすべてのプランで対応しているわけではないんです」
「ああ、そうだったのですか、それは残念です、では、うーん、どうしましょう、いったんキャンセルということにさせてもらっても差し支えないでしょうか」
「はい。この電話でキャンセルを承ります」
その後すぐに「日帰りプラン利用キャンセルのお知らせ」メールが届く。この施設、メール仕事は早い。板場との連絡確認仕事はしないがメールは早い。
それにしても、県境を超えて福島県に入ると五葷抜きリクエストがするすると通るのに対して県境手前の新潟県では不思議と対応に困難度が高くなる。これまでいくつか対応してくださる施設にも恵まれたが、対応してくださる時に会津地方のような「はいはい、あの系統ね。承知しました。対応いたします(当日飛び込み客であるにもかかわらず、だ)」というかんじではなく「今一度確認いたしますが、これとこれとこれとこれとこれとこれですね。薬味だけでなくドレッシングなどのソースやスープベースとしても入っていないほうがよろしいということでしょうか」というようなステップがいくつか生じる。それでも対応してもらえるとそれはたいそうありがたくうれしい。旅先での食事のことを考えると何度も旅をあきらめそうになるから。食べたら食べたで旅先での体調が大きく崩れ結局旅どころではなくなるから。
しかしアレルギーと好き嫌いでは違うのは違うだろうが、アレルギーではなく宗教上の理由であるとか宗教でなくても生活信条が背景にあるとか(菜食主義や五葷抜き菜食主義(素食スーシー)など)理由は人それぞれだと思うのだが、対応する側であればさらなる対応に備えてアレルギーなのか好き嫌いなのか宗教的理由なのか生活信条理由なのかを確認するのもよいかもしれないが、対応しない側が「アレルギーと好き嫌いでは違うので」と言うのは何かが少々残念に感じる。
しかしこれも何かのお導き。ここで空いたお昼の時間は別のなにかを味わい楽しむことになっているのだわ、きっと。
予約作業、確認作業、キャンセル作業、お疲れ様でした、わたし。