ナビさん

我が家の車はこのたび新しくなったが、ナビゲーションシステム(以後ナビさんと呼ぶ)は以前の車につけていたものをそのまま今の車に付け替えた。車を新しく買おうとしたときに標準装備でついているのはCD(といってもなにやらデータ音楽はいっぱい入れられるよという内容だったような)とラジオというオーディオに特化したもので、ナビを付けようと思うと別途オプション扱いになることを知った。我が家ではナビの存在が夫婦円満におおいに役だっており、ぜひともナビには車内に常駐してもらいたい。車屋さんの担当の方に「ナビが標準装備のものはないんでしょうか」と尋ねると「最近は皆さんスマートフォンを持っていてそのナビ機能を使うことが増えてまして車の中にナビ専用の機械を置かなくても事足りるようになったんです」と教えてくださる。ほおー、なるほど、スマートフォンかー、と感心はしたものの、だからといってじゃあうちもスマートフォンにすればいいのね、とは思わない。スマートフォンをナビとして使う人は助手席の人にスマートフォンを持っていてもらうのか車の前方どこかにスマートフォンを設置する場所があるのか何かスマートフォンをナビとして使うのに使い勝手の良い方法があるのではあろう。しかし、そういうことであるならば、我が家では、これまで乗っていた車につけていたナビさんに新しい車でも引き続き活躍してもらいましょう、ということにする。我が家のナビさんは一昔前の人なのでMDプレーヤーがついている。ナビさん購入当時にMD付きMDなしを選ぶことはできたが、当時はMDがこれほどまでに衰退するとは思っていなかったからMDあるならあるほうがいいよねと思いMD付きを選んだ。そして我が家のナビさんの地図は購入当時のままなので彼はその後新しくできた道路についての知識がない。そのため旅先ではよく延々と荒野の中の道なき道をひた走っていることがある。あるいはかつては道だったが今は行き止まりになっている道に案内してくれることもある。新しい地図データを購入して挿入してやればきっとこういう事態は少なくなる。約二万円を投資して新しい地図データにお世話になりサクサク快適な案内に導かれて運転するか、ときどき「かーっ、またナビさんにやられたーっ」と叫んだり「ナビさん、私は誰、ここはどこ、状態になってるみたいだけど、がんばれー」と応援したりしながら今のナビさんの案内で満足するか(実際それでたいして支障がないといえば支障はない)我が家の検討課題。
そういう経緯で新しい車でも現役活躍中のナビさんだが、今回の旅行中にちょっとしたトラブルがあった。ナビさん自体のトラブルではなく、ナビさんとエアコンとエアコン調整ボタンとハザードランプなどを覆うパネル部分(フロントパネルというのかパネルカバーというのか)がパックリと外れたのだ。路面の荒い道路を走行しているときに何かがビリビリというような微細にカタカタと音がするようなその気配を追求してこの音はどこから出ているのだろうかと音源をさぐっていたらナビさんのパネル部分に行きあたり「はてさて」とその部分を触ってみたらパネルがぱかーと開いた。うわーっ、なんじゃこりゃー、と驚き、ここをこうはめこめばカチっと固定されると思われる部分を先にはめて全体をパンっと押して蓋をしようとするのだが、素人の腕では思うようにならず、またこれはぜひとも販売店の人にこの状態を見てもらいたいとも思い、下手に手出しせずこのまま持ち帰り見て直してもらいましょうということにする。帰宅後、一ヶ月無料点検に出すついでにそのパネルも見てもらった。残念ながら担当の人はお休みでぱっくりパネルを見てもらうことはできなかった。代わりに受付の女性の方が一ヶ月点検シートを書き込みつつ「何か不具合があればお聞かせください」と「不具合な点」と書いてある欄にペンを置いて問うてくださるので「説明するのは難しいので実際の状態を見ていただけますか」とお願いして車まで来てもらう。「今回東北方面に旅行に行って来まして、新しい車はなめらかな走行でそれはもう快適で、本当にありがとうございましたなんですが、一点だけ、なんだかビリビリカタカタと音がするなあと気になりまして、どこから音がするのかなあと思って指先でさぐってみたら、ほら、ここなんですけどね、こう隙間がありまして、この隙間を辿ってここを触っていたらこうパクーっとこのパネルが開きまして中身が丸見えに」と説明する。受付の女性は「こっ、これはっ、走行中に外れてくるようなものではないので、新車を納車したときにこの状態だったということですよね、本当にすみませんっ」とおおいに驚いてくださった。
一ヶ月点検はそれ以外の異常はなく、外れていたパネルも本来の状態にきっちりとはめ込んでもらい、点検は無事終了。めでたし。