生きくらげが好きみたい

これまでとりたててきくらげや生きくらげを繰り返し買い求めたことはない。どこかでなにか食べた時にきくらげが入っていれば、こりこりしていておいしいなあ、とは思っても、自分で乾燥きくらげを常備して日常的に頻繁に料理することはなかった。
夏場になるとキュウリと鶏肉を具にしてレモン汁をたっぷり入れたスープを作ることがある。そのときには白きくらげを入れるとたいそうおいしいので、前もって市販の白きくらげを買ってきておき水に戻して使うことはあるが、キュウリと鶏肉だけ自宅の冷蔵庫にある状態で当日急に思い立って作るときにはそのメニューにおいて白きくらげは省略する。先程から白きくらげ白きくらげと言っているが、このメニューではおそらく白きくらげにこだわる必要はなく黒いきくらげでもおいしく仕上がると思う。
先週の生協カタログに新潟県産生きくらげが載っていた。ああ、なんだか妙においしそうと思い一個注文。届いた生きくらげは「木耳(きくらげ)」というその漢字がぴったりの黒っぽい耳のような袋状のキノコのような形で一個あたりの大きさは赤子の手のひらくらい。それが根元でつながっていて大人の手のひらくらいの大きさのものもある。
さっと洗って熱湯で1分弱茹でる。ザルにあげて冷ます。どうやって食べようか検討した結果、酢の物、汁、炒めもの、とすることに決定。
酢の物は冷凍の梅酢ダコを解凍してぶつ切りにしたものとそのタコが浸かっていた梅酢と木耳をぶつ切りにしたものを混ぜて完成。今日はすりゴマがたくさん食べたい気分だったから、すりゴマもたっぷりかける。ここに春雨があったらさらに私好みだったな、と思うが、春雨の在庫はなかったので今日は春雨なしで。
汁は、細めに切った木耳をだしに入れ、そこに麸を加える。麸がだしをしっかり吸って煮立ったら溶き卵を泳がせてかき玉汁に。今日はすりゴマがたくさん食べたい気分だったから、ここにもまたすりゴマをかける。
炒めものは、ベーコンとアスパラガスとスナップえんどうと木耳をオリーブオイルで炒めて塩と胡椒で味付けてから、ここにも溶き卵を入れて卵とじにする。卵の黄色が加わることで色合いが華やかにおいしそうに整う。
今回買った生きくらげはどの料理においてもその食感が気持よく味がおいしい。目をつぶって静かに咀嚼し嚥下するあいだ、ああ、おいしい、私はこんなに生きくらげが好きだっただろうか、これからは生きくらげ好きとして生きていくんだろうか、と考える。
これまでは旅先の帰り道に野菜直売所などに立ち寄っても生きくらげをさがし求めたことはなかったけれども、今度からは「生きくらげがあったら買って帰る」と思いながら売り場を徘徊したい。