からから

帰省から戻ってきてベランダのフウセンカズラを見る。植木鉢ごと浸けておいたタライの水はすっかりなくなっている。フウセンカズラが吸い上げたのと直射日光で蒸発したのと両方なのだろうけれど、ほんとうにからからのからっぽ。水がなくなったかわりに砂埃と落ちて乾燥した花がタライの中にはある。
出かけるまえには植木鉢の半分よりすこし下くらいまでが水に浸かるようにしておいたのだが、もっとたくさんの水につけておいてもよかったのかもしれない。根腐れしてもいけないしと思い気持ち少なめにでも少なすぎない量にしたつもりだったが、次回夏場に家をあけてベランダの植物に留守番をしてもらうときには、これ以上水を入れたら植木鉢が浮くのでは、と思うくらいたっぷりのタライの水に浸けてみよう。
フウセンカズラはベランダでつまり屋外で留守番だったからだけど、屋内にいる蚊連草ともうひとつなにかの植物は出発前にたっぷり水をやっておいただけで十分に元気なままだった。それならフウセンカズラも家の中に入れて私が不在中の乾燥から保護してやるとよいのではないかという気がしないでもないが、しかしベランダのフウセンカズラを家の中に入れたのでは蜂のお世話になれない。ベランダと居間を仕切るサッシは外出中はぴっしりと閉じて鍵をかける。在宅のときも網戸にはしても網戸を開けて完全開放するのは風を通すときと洗濯物を干したり取り込んだりするときくらい。フウセンカズラの受粉をしてくれる蜂のことを少し前から個人的にたいそう歓迎しているとはいえ、蜂に家の中にまで入ってきてほしいかというと歓迎するのは屋外までだなと思う。
空になったタライからフウセンカズラの植木鉢を取り出しベランダの地面にじかに置く。タライは洗って拭いて乾かし、もともと屋内で活躍または保管していた場所に片付ける。大きいペットボトルに水をくんでフウセンカズラの根元にドポドポと注ぐ。鉢の下から少し水が出る。屋内の植物にも普段より少し多めに水を与える。しばらくするとフウセンカズラの植木鉢の土の表面が乾いて見える。植木鉢の下に流れ出ていた水ももうない。蒸発したのかしら。もう一度水をくんできてドポドポと注ぐ。水がぎゅんぎゅん土に吸い込まれる。
出発まえに比べるとフウセンカズラの葉は少しだけ黄色みを帯びた。水が少ない中で強い日差しを浴び続けたせいもあるだろうし、フウセンカズラのもともとの経時変化としての変色もあるのだろう。フウセンの数は数えてみたら78個になっていた。大豊作だー。フウセンの大半は緑色と黄緑色だが既に数個茶色っぽい外観になったものがあり、その茶色くなったひとつを枝からもいでみた。手の中のフウセンの中から「からから」と音がする。種だ。わあわあ、種だ種だ収穫だ。茎についている緑色のフウセンを触っても種のからからという音はしない。もいだフウセン以外のまだ茎に残してある茶色いフウセンはからから音がするのかしら。もがずに手に取り軽くふってみる。音はしない。まだ種がフウセンの中で固定された位置にあるのだな。からからと種の音がするフウセンは私がもぐときにぎゅっとひっぱってぶちっとちぎったからその勢いでフウセンの中の種の固定が外れたのかな。次に茶色いフウセンをとる時にはぶちっとちぎらずはさみでフウセンのぶら下がっているところをちょきんとやさしく静かにとってみよう。そして茶色くなったまま収穫せずに放置しておくとどうなるのか、茎についたままでもやがてからからと音がするようになるのか、あるいは、フウセンごと落下するなどして「はよ、拾わんかい」と訴えてくるのか観察したい。
さて、袋菓子を両脇に引っ張って開封するときのように茶色いフウセンのお尻を指で開封してみた。フウセンの中は薄い膜でみっつの部屋に分けられているがその膜も一緒にやぶれた。種は三個。おそらく一室につき一個の種がなったものと思われる。フウセンを回転させて種が中から転げ落ちるようにしてみる。出てきた種は直径約5mmの球体。球体表面黒い部分と白いハートに似た形の部分とで構成される。次にフウセンの中の種を見る時にはからからと音がしないフウセンの下の方をはさみで輪切り状に開けて種がフウセンのなかでどこにどのようにぶら下がっているのか、黒い部分と白い部分のどこで固定されているのか、といったあたりも見てみようっと。フウセンのおしりのほうを輪切りにするだけでなく、フウセンの側面を輪切りにしての観察も行いたい。