猪苗代湖遊覧船5/2

智恵子記念館が休館日だったので、そこから今度は野口英世記念館に移動する。お天気はどんどんと曇りどんどんと雨になる。雨好きの私には好ましい展開であるが、雨があまり得意でない夫はなんだかいろいろと残念そう。そんなときには雨好きの妻が好きな雨になってよかったね、と思うとしあわせな気分になれるかもよ、と提案するが、「なんか、それは、いい」と消極的。
野口英世記念館の手前にはラーメン関連用品を多く扱うお土産物屋さんがある。一度その駐車場に入ったが、妙に車が多くて駐車しづらかったので、ここはまたちょっとあとにすることにしていったん脱出。
夫が「遊覧船あるなら乗りたい」とこの天候で湖の遊覧船を希望するとは晴れ好き雨苦手の夫にしては珍しいなと思いながら遊覧船乗り場に到着。
私達が乗った遊覧船は「はくちょう丸」。もうひとつの船は「かめ丸」。はくちょう丸は白鳥の形をしていて、かめ丸は亀の形をしている。
遊覧船内に流れる案内によると猪苗代湖は水の透明度は高いものの、その成分が魚類の生存にはあまり適していないため、大きな湖のわりには淡水魚がそれほど多くは棲んでいないとのこと。
船内アナウンスの背景に流れる音楽がなぜかどれも三拍子。
猪苗代湖には「手長足長(脚長)」という言い伝えがある。その昔、手の長い「手長」と脚の長い「あしなが」という巨大な化け物がいたずらに雨を降らせて、地元の人の農作業に苦労を強いていたが、そんなに手が長くても脚が長くてもこの小さな壺の中には入れまい、とけしかけられて「それくらい造作もないことだ」と壺の中に入った手長と脚長を壺に閉じ込めて蓋をして法衣で包んで出られないようにしたのはどうも弘法大師さまであったらしい。その後この地は農作物が豊かに実る土地となったのでありました、というようなおはなし(実際のおはなしはもっと長い)。
夫はその案内のあいだ、遊覧船内でくうくうと眠る。しばらくして目が覚めると「この船の振動が眠気をちょうどよく誘う。遊覧船に乗ってよかったなあ」と言う。遊覧船乗船目的は居眠りにあったのだろうか。そして夫は「で、なんか会津磐梯山の妖怪はどうなったん?」と訊くから「弘法大師がとじこめたんだって」と端折りに端折って説明する。ふたりで「あいかわらず弘法大師はあちこちに出没するなあ」といつものように弘法大師という人のフットワークの軽さに感心する。
それにしても弘法大師さまはあのおおまかな時代のあいだにあんなに全国各地に出没しているということは、単独個人ではなくて「チーム弘法大師」かなにかだったのではないかなあ、とよく思う。
船を降りると隣に停泊していたかめ丸が出航するところであった。はくちょう丸のお客さんもかなり少なかった(たぶん合計十人くらい)が、かめ丸の船内にはお客さんの姿が見えない。
雨と風がさらに強くなる。