雨の宿5/3

今回の宿は一泊二食付きであるから宿の朝食を食べることになる。宿の朝ごはんは八時半開始。
たいていの宿の朝ごはんは我が家の夕ごはん以上にボリュームがある。その朝食をおいしくいただくためには早く起きてお茶をゆっくり飲んで胃腸をウォーミングアップする必要がある。というわけで六時過ぎに起床し、六時半すぎにお風呂に入る。今度はお風呂に入っても蕁麻疹が出なかったから、温泉のお湯に反応してというわけではなかったようだ。温泉好きであるのに温泉に入ると蕁麻疹が出る身体になったらそれはたいそう悲しいなあと思う。
お風呂から上がって電気ケトルでお湯を沸かし、熱い紅茶を入れて持参の豆乳と混ぜて飲む。それから緑茶を入れて飲む。おいしい緑茶は大好きだけど、夕方以降に飲むと夜の睡眠に支障が生じるから、飲むのは午前中と決めている。昨夜はやはりウェルカムコーヒーを夕方四時半に飲んだのが効いて睡眠の質は高くなかった。だがそれはそれで休日中にそういう日があってもかまわないことだから、うーんさすがコーヒーねと思っている間に眠ればそれでよしなのだ。
朝ごはんを食べる席から窓の外の木々が見える。雨が強くなり葉っぱが風としずくで揺れる。こういう快適なお宿の中からこうして眺める雨は格別ねえ、とうっとりとしているところにお宿の方と夫他のお客さんたちの「あいにくの雨ですねえ」という会話が聞こえる。
お宿の朝ごはんはどれも丁寧に作られていておいしい。噛めば噛むほどその素材の味が全身に染み渡る。最後に出されたコーヒーもまた「あ、これは今日も飲める」と体で感じて美味しくきゅきゅきゅっといただく。
今日はどちらに、というお宿の方の問に、一組の方は「今日は那須へ」と言われ、もう一組の方も「今日はどこどこに」と目的地を話されるが、私たちは「考え中です」と応える。
部屋に戻って、お布団に横になって、くちくなったおなかをこなす。
快適な洗面台での歯磨きをゆっくりとたのしみ、身支度と荷造りを整えて十時前にチェックアウト。
お宿の方が「どちらに行くか決められましたか」と問われ、「はい、とりあえず磐梯山の周りをぐるりとドライブしながら考えようと思います」とやや進展した内容の返答をする。宿の方は「今夜はどちらにお泊りですか」と訊いてくださるが「それもまだ決めてないんです」と答えるしかない。「今日は三日ですし、さすがにどこもいっぱいなのではないですか」とこの日の予約がいっぱいであるお宿の方は心配してくださるけれど、そこは大丈夫、こんな祝日でも空いてるお宿はけっこうあるもので、なかったとしても気合を入れれば自宅まで帰ろうと思えば帰れる片道六百kmだけど大丈夫という気軽さが私達をだらだら旅行に導く。
さあ、雨と雲で世の中が全体的に煙っているけど、磐梯山周辺をぐるりと走行してみましょう。