なめこの水煮缶5/3

馬刺し定食でお腹がいっぱいになったあとは、なめこの水煮缶詰を求める。昨年立ち寄った道の駅に近づくと、一年前の記憶がいろいろと具体的に蘇ってくる。
「去年、ここで沖縄の特設コーナーがあったよね。ここで二人で一個ずつソフトクリームを食べて、そのあと外でどうやらくんはコロッケを買って食べたの。私はコロッケにタマネギ入ってますかって訊いたら入ってるって言われたからやめて店内の手作りクッキーを買ってきてベンチに座って一緒に食べた」
「ああ、そういえばそうやったなあ。あれ、去年と同じ宮古島の旗が立ってる」
「あ、ほんとだ。期間限定の特設コーナーかと思ってたけど、通年なんかな」
「あれじゃない、姉妹都市とかなんかそんなの」
「あー、そうなんかなー」
店内には去年と同じ場所に宮古島コーナーがある。なめこの水煮の缶詰は、と、探すが、去年買い求めた小さいサイズの缶をネット(網)でセットにしてあるものが見当たらない。うーん、このサイズの缶は、自宅用には大きいなあ、と思いつつ缶を睨む。しばらくすると夫が「小さいのあった」と言って四個入りネットをふたつ手に持ってくる。
「わあ、すごいすごい、どこにあったの?」
「あっち」
夫が見つけた場所に行くと、他には大きな(中くらいの)缶ばかりなのに、その中にひっそりと小さな缶がふたつだけあったのだそう。
この会津なめこの水煮缶詰は、そのまま開けて大根おろしと混ぜて食べる。少しお醤油か出汁醤油をたらしてぐるぐるとかき混ぜて。そのまま食べてもおいしいし、うどんやそうめんの具にしてもおいしい。去年は少ししか買わなかったためそのおいしい大根おろしとの組み合わせだけしか体験できなかったけれども、きっとこれは山芋おろしと混ぜて食べてもおいしいはず。もちろん汁物の具にしてもおいしいだろう。
もともとキノコとしてのなめこは好きな方ではあるが、会津なめこは食べた時に思わず「あ、おいしい」と口が勝手につぶやく。くっと咀嚼した時に口に広がるなめこの味が、普段近所のスーパーで買い求めるなめこなどよりも深く奥行きがあるように感じる。
今回も去年と同じ手作りクッキーを買う。去年はあんなに日に何度もソフトクリームを食べたのに、雨が降って気温が低いとこんなにソフトクリーム欲が減るのかな、それとも私が去年よりもひとつ大きくなって食の好みが変わりソフトクリーム欲が減っているのかな、どちらだろう。
なめこの水煮缶詰を無事に入手して安心して出発する。阿賀野川が近くなってきた頃に夫が「そろそろこのへんで泊まるところに逗留したいなあ」と言う。そうか、じゃあ、今日はこの周辺に泊まることになるのね。昨年は一泊目に阿賀野川沿いの咲花温泉に事前に予約して泊ったけれど、今回は予約なしで五月三日に空いているところは、どこのどんなところかな。