黒部五郎岳作戦

夫が近々予定している富山県黒部五郎岳。くろべごろうだけ、と読む。
五郎は人名のように見えるが、もともとは、ゴロゴロとした石がたくさんある山のことを「ゴロ」と表現していたことによるもので、人名の五郎とは関係がない。
黒部五郎岳の近くには野口五郎岳というところがある。歌手の野口五郎さんの芸名はこの山にちなんでつけたらしいよ、と夫が説明してくれたときに、「野口五郎岳野口五郎さんの私有地なの?」と私が訊いたら、夫は「それはありえんやろう」と言った。ありえないだろうか。
この黒部五郎岳に登ろうと思うと登山口まで有料(往復1800円)の林道を通る必要がある。しかし、その林道は夜八時から翌朝六時までは閉鎖される。夜中三時前後に自宅を出発し深夜早朝の高速道路を走って翌朝六時前に林道口に並び朝一番で林道を通過したとしても、登山口に車を駐めて歩き始めると七時を過ぎることになる。そこから八時間歩き続けて山小屋に到着するとしたら午後三時。それではなんとなく慌ただしい、のだそうだ。
そこで夫が編み出した方法は、既に他の山登りさんたちにはある程度定番の方法ではあるのだが、これまで「車中泊」という方法を採用していなかった夫にとっては「車中泊」を採用した新たな方法。
黒部五郎岳作戦。まず金曜日の夕方定時で仕事を終える。→高速道路をひた走る。→コンビニで夕食用お弁当と翌日の朝食用お弁当と山に持って行く用のおにぎりを買う。→夜八時までに林道(往復1800円)を通り抜ける。夜八時半前後に登山口駐車場に着く。→買ってきたお弁当で夕食。→持ってきた使い捨てボディ用ウェットシートで入浴代わりに身体を拭く。→駐車場に設置されているトイレの水道で歯磨きと洗面を行い車中で寝る。→土曜日おそらく朝三時くらいには目が覚める。→身支度をして朝ごはん用のお弁当を食べる。→朝四時くらいから歩き始める。→八時間歩いたとして正午過ぎには山小屋着。山小屋でゆっくり過ごす。→山小屋の夕ごはんを食べる。→お風呂はないので再び使い捨てボディ用ウェットシートで主に足を拭き、携帯しているハッカ油で脚のマッサージを行う(疲労回復目的と消臭目的とがある)。山小屋の夜は早いのでおそらく夜七時くらいには就寝。→日曜日朝起きる。宿で朝ごはん食べる。→下山開始。下りは早いので八時間よりも短い時間で駐車場に到着。林道の復路を走行し帰路につく。たぶん夕方までには帰宅できそう。
金土と入浴しないことになるが、夫によると「まだ山でそんなに臭くて近寄れない人には会ったことがない」「自分も汗かいててそれなりに臭いからあんまり気にならんのんかもしれん」ということだ。
この行程を書きだしてみて思ったが、金曜日の夕食は現地インターチェンジを降りてからお弁当を買って食べるよりも、高速道路のSAで品数の多い定食っぽいものを食べておいたほうが、山を歩く身体に事前に供給する栄養のことを考えると、望ましいのではないかな。


追記。
夫のいいところはこういう計画に私を誘うことなくちゃんと放っておいてくれるところ、そしてひとりで元気に行って機嫌よく遊んで帰ってくるところ、だと思う。