テントごちそうさまでした

赤オクラを念願の「東京納豆」と混ぜて食べる。「東京納豆」は名前は「東京納豆」だが地元の会社が作って販売しているもの。この納豆は細長いパックに入っていて納豆以外の付属品(タレなど)がついていないのと大豆の味が私好み。納豆を買うつもりのときに売り場にあればこれを買う。ないときには他の三連パックのタレ付きのものを買うこともある。
私が塩もみキュウリを作っている間に夫が赤オクラを薄い輪切りにしてくれた。赤オクラを、夫は納豆と混ぜて、私は納豆に混ぜたものと少し残したものを鯖の味噌煮缶の煮汁に入れて食べてみた、おいしいおいしい。
今日は鯖缶が食べたいなあ、と思い缶詰置き場から鯖缶を出して器に入れる。ああ、食べたいなと思った時に食べるものはおいしいな、と味わう。夫が「なんか今スーパーで鯖缶が売り切れ続出らしいな」と言う。テレビのダイエット特集で取り上げられてブームになっているのだとか。知らないうちに世の中ではいろんなことがブームになっているのであるなあ。
夫が「鯖缶と塩もみキュウリの組み合わせは、小学校のキャンプの朝ごはんを思い出すなあ。四年生五年生六年生が参加するキャンプはお楽しみのイベントだったなあ」と言う。
「どこでキャンプしてたん?」
「小学校の校庭」
「え、それじゃあ、場所が小学校なら、水道もトイレもあるじゃん」
「あるよ。あるに決まってるじゃん。校庭にテントを張ってその中で寝るイベントじゃもん」
「私が行ってた小学校のキャンプは五六年生参加だったんだけど、川の上流の河原か河原に近いところまで延々歩いて行って歩いて帰ってくるんだけど、食器とか洗うのは川の水だったし、トイレも地面に穴を掘って木の板を渡して足場を作って周りを囲って見えないようにしたんだよ。そういう水回りがないところだったから全然快適じゃなかった」
「川の水って、だいじょうぶなんかな」
「んー、昔だから当時はまだぎりぎり大丈夫なくらい上流のほうは川の水がきれいだったか、人間のほうが気軽に命かけてたか、なのかなあ。私が記憶してないだけで、タンクに入れた水を運んできてもらってたんかなあ、料理用の水は川の水じゃなくて水道水を使いたいよねえ。キャンプは夏休み中で暑いし、トイレは不便だし、たのしいイベントというわけではなかったなあ。他の子はどうだったか知らんけど、私はサバイバル訓練入門編っぽく捉えていたような気がするなあ。思い出してまたあれをしたいとは思わん。ところでキャンプなのにカレーは作らないの? キュウリと鯖缶がメインなの?」
「カレーは晩御飯。鯖缶と塩もみキュウリは翌日の朝ごはん」
「そうなんだー。私はキャンプの夕ごはんがカレーなのはおぼえていても、朝ごはんのメニューは思い出せない。ご飯と味噌汁だったのかなあ」
テント宿泊の経験で思い出せるのものはいくつあるだろう。
子供の頃、自宅の庭で夜空に降るような流星群を寝転んで眺めながら寝たとき。自宅だからトイレもお風呂もあったしテントに自分が普段使う枕を持ち込めて、参加者は私と弟と妹だけで、母と父と祖母がたまに(実はちょくちょくだったのかな)様子を見に来てくれて、テント内睡眠に途中で飽きれば家の中のベッドに入って寝ればいいという気楽なテント泊。
そして小学校五年六年のあんまり気楽じゃない河原キャンプ。
中学校の林間学校はどこかの施設の何段ベッドかだったからテントではなく水道もトイレもお風呂もあったが快適というわけではなかかった。
高校は三瓶山でテント泊(水道とトイレはあったが入浴はなし)。
あとは結婚後大阪在住時に夫と伊勢志摩旅行中に買ったアワビと伊勢海老を炭火焼にして食べるために泊まった伊勢志摩の旅の道中にあったキャンプ場(水道もトイレもある)。
大阪在住時に大阪南部のキャンプ場でテント泊したときには、そのキャンプ場は深夜近場の若者たちが(遠くからわざわざ来るのかもしれないが)シンナーを吸いに来る場所だったらしく、漂う有機溶剤臭のために寝ながら頭痛に苦しんだ記憶がある。そこにはトイレと水場はあったがお風呂はなかった気がする。
そういえば大阪在住時には十津川温泉近くのキャンプサイトでもテント泊したなあ。そこにもトイレと水場はあった。お風呂は十津川温泉を日帰り入浴で利用した。
熊本移住後に二回くらい行ったキャンプ場には共同の水場と調理場以外に個人のキャンプサイトにも水道と調理台が設置されていて、私たちは一度も使わなかったけど使いたければ電源も使えた。そのキャンプ場には受け付けの横にシャワースペースがあり有料でシャワーを利用できた。シャワーがあるくらいなので、トイレも当然あり山奥だけどちゃんと水洗だった気がする。
その後は北陸在住後にサンマを炭火で焼いて食べたいがために、共同水場と水洗トイレのあるアウトドア施設を何度か利用したがそのときにはログハウスの中で寝るスタイルでテントは使っていない。しかもそこでは温泉入浴ができたのでシャワーで汗を流しただけよりもさらにさっぱりと過ごせた。
しかし、こうして振り返ってみるとつくづく私はテントよりもログハウスよりもおうちが好きだなあと思う。外泊するとしても水回りと寝具と空調が快適に整った環境がいいなあ。残りの人生は自分が気に入るように整えてある心地良い空間で寝心地のよい寝具でぐっすりと思う存分快適に眠りたい。もうテント泊は一生しなくていいです、もう十二分に堪能しました、ごちそうさまでした。